
Sep 16, 2025 / Interview
トーキョーバイク × クラフトシップス 日用品と職人技の共創記 vol.03[対談篇]
400年の技を宿す高岡銅器の産地で培われた箔押し技術が生む
re tokyobike -HAKU-〈箔押しモデル〉
トーキョーバイクと日本の職人技が生んだ開発背景を辿る
トーキョーバイクが創業以来掲げてきたのは、単なる移動手段ではなく「街を楽しむツール」としての自転車という思想です。
ローカルな街との関わりや、長く乗り続けられる仕組みを大切にしながら、日常の暮らしに寄り添う時間をデザインしてきました。
その思想とクラフトシップスのビジョンが交差し、共同開発によって日本の職人技を重ねた〈re tokyobike -HAKU-〉が誕生しました。プラチナ箔をフレームに施した唯一無二の一台は、日常の道具に文化と記憶を宿す新しい挑戦です。
本稿では、トーキョーバイクの本多さん・神岡さんにお話を伺い、ブランドの思想と地域との関わり、そして〈re tokyobike -HAKU-〉誕生の背景を紐解きます。

01 コンセプト ── 「街を楽しむツール」としての自転車
CS 森川)
トーキョーバイクさんといえば、単なる移動手段ではなく街を楽しむツールという印象があります。ブランド立ち上げから大切にしてきた価値観は何でしょうか?
トーキョーバイク 本多さん)
入社したきっかけもまさにそこなんです。私たちが重視しているのは「街を楽しむ」という体験。自転車に乗ることで、新しいお店に出会えたり、自然の匂いを感じられたり。日常を楽しむためのツールとして、自転車をお届けできたらと思っています。
他のバイクブランドは重量やギアなどのスペックを中心に評価されることが多いですが、私たちは体験を大事にしているんです。

02 地域とつながる ── ローカルに根ざす姿勢
CS 森川)
体験と同時に、地域とのコミュニケーションも大切にされている印象があります。
トーキョーバイク 本多さん)
自転車は定期的なメンテナンスや修理が必要なため、地域に根ざすことが、ユーザーの方に長く安心して使っていただく上で大切だと思っています。また、近隣のお店の方やご近所の方との交流も大切にしています。そうした地域との関係性の中でお店を運営できることは、私たち自身にとっても、純粋に楽しいことなんです。

03 長く使うための仕組み ── クロモリフレームとアフターフォロー
CS 森川)
自転車を「長く使っていく」価値観については、どう考えていますか?
トーキョーバイク 神岡さん)
素材選びからその思想を反映しています。私たちはクロモリ(鉄)を使っていますが、これは歴史的にも長く使われてきた素材です。壊れにくく、修理すればずっと乗り続けられるんです。
実際、谷中店は16年以上続いています。今でも地域の方々に支持されているのは、アフターフォローの姿勢があるからだと思います。
CS 森川)
具体的にはどんなフォローをされているんですか?
トーキョーバイク 神岡さん)
修理は「なんでもやります」というスタンスですね。フレーム交換が必要な場合を除けば、基本的には全部対応します。それに加えて「バイク銭湯」という洗車サービスを谷中店独自で始めました。汚れを落としてピカピカになると、また乗りたい、使い続けたいと思えるんです。

CS 森川)
re tokyobike (リ・トーキョーバイク)という取り組みも、その延長にあるんですね。
トーキョーバイク 神岡さん)
そうですね。re tokyobike (リ・トーキョーバイク)は「古いけどワクワクするモノ」をコンセプトに始めました。中古車を整備・カスタマイズして、新車とは違った魅力をもつ自転車として販売しています。結果として価格が新車より高くなることもありますが、使われてきた”時間"という価値を引き上げるための「工夫」とそれを楽しむ「遊び心」がre tokyobikeの価値になっています。

04 箔という挑戦 ── 「re tokyobike -HAKU-」誕生の背景
CS 森川)
今回の別注モデル「HAKU」には、どのような想いがあったのでしょうか。
トーキョーバイク 本多さん)
もともと私たちは「ものづくりを楽しむ」姿勢を大切にしています。過去には、三菱鉛筆さんと一緒にボールペンを作ったり、漆塗りのバイクを制作したこともありました。今回のプラチナ箔は提案された中で「想像できないからこそ見てみたい」と強く思わせてくれたんです。
CS 森川)
箔押し技術は、古くから仏具や建築、絵画に命を吹き込んできた伝統技術です。その一方で、わずか数ミクロンという薄さゆえ、指先に触れただけで破れてしまうほど繊細で、呼吸や室温までもが仕上がりに影響を与えます。本来は平面や限られた形状の対象に施されてきた技術を、曲線と直線が複雑に入り混じる自転車フレームに定着させるのはとても難易度が高くごく限られた職人にしか成し得ない挑戦でした。
それでも挑戦したのは、箔が光を纏わせ、時間とともに表情を深める素材だからです。角度や環境によって異なる輝きを見せる箔の特性を、自転車という日常の道具に重ねることで、使うほどに個性と記憶を刻んでいく存在へと昇華できると考えました。「re tokyobike -HAKU-」は、まさに“走る工芸”と呼べる唯一無二の一台に仕上がったと思っています。

トーキョーバイク 本多さん)
他の自転車ブランドではなかなかやっていない取り組みだと思います。職人技術についての知見を深めながら進められたのも、すごく貴重な経験でした。
トーキョーバイク 神岡さん)
普段、食事の際には「いただきます」と生産者や食べ物に感謝を表現しますが、モノに対しては作り手の存在を意識しにくい。今回の取り組みをきっかけに、乗る人が職人を思い浮かべる瞬間が生まれたら嬉しいですね。
トーキョーバイク 本多さん)
伝統技法はただ保存するだけではなく、現代にそった形で継承されていくといいなと思います。今回のようにプロダクトと伝統技法を掛け合わせることで、伝統技法が今までと違う形で生活の中で使い続けられていく。それがHAKUの持つ可能性だと思っています。

05 消費から継承へ ── 文化を継ぐ一台
re tokyobike -HAKU-〈箔押しモデル〉。
それは、自転車という日常の道具に、日本の職人技と文化の記憶を重ねた唯一無二の存在です。
都市の喧騒の中を走るときも、静かな住宅街をゆっくりと抜けるときも、フレームに宿る箔の輝きは、ただの装飾ではなく手仕事の確かな息づかいを映し出します。そのきらめきは、ふとした瞬間に使い手の記憶へと結びつき、日々の風景を新しい物語へと変えていきます。
暮らしの中で消費されていく道具ではなく、文化と感性を継いでいく存在として。
HAKUが、これからの時代を紡ぐ一台となることを願っています。
展示・販売について
本モデルは『CRAFTED CONNECTIONS(クラフテッド・コネクションズ)』にて特別展示・販売されます。

会期:2025年9月24日(水)〜9月30日(火)
会場:銀座三越本館7階 GINZAステージ
営業時間:10:00〜20:00(最終日は18:00閉場)
入場:無料
職人技術と6ブランドの共創によって生まれた限定モデルが一堂に会する本イベントで、ぜひ〈tokyobike × クラフトシップス〉の新しいかたちをご覧ください。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000141714.html
※なお、本商品はイベント開催期間中(2025年9月24日〜9月30日)のみの限定販売となります。
会場に加え、公式オンラインショップでも同期間中のみご購入いただけます。
《 公式オンラインショップ 》
【トーキョーバイクについて】
1997年に創業し、2002年より自転車の製造販売を開始。 街を楽しむプロフェッショナルとして、速く走ることや移動することを目的とするのではなく、日常にささやかな変化を加えるためのツールとしての自転車を提供しています。
2021年には、オーナーのライフスタイルの変化などで手放さざるを得なくなったトーキョーバイクを引き取り、整備し、次のオーナーへ販売する取り組み「re tokyobike (リ・トーキョーバイク)」をスタート。メカニックが自転車の個性に向き合い、こだわり抜いてカスタマイズを行い「古いけどワクワクする一台」に仕上げています。