
Sep 29, 2026 / Interview
バンダイナムコエクスペリエンス × クラフトシップス IPと工芸の共創記[対談篇]
子どもの頃に遊んだPAC-MANと、大人になって乾杯する。
「クッキー(ドット)を食べる」を楽しむ酒器は、どう生まれたのか。「PAC-MAN:kanpai bell 音玉 - TONEs DOTs -」の発想から商品化まで、IPと工芸を組み合わせる意味を辿る
富山県高岡市の小泉製作所でつくられる「kanpai bell」は、二つを合わせると、おりんのような澄んだ音が響く酒器です。今回の特別モデルでは、『PAC-MAN』のモチーフを施した酒器に、クッキー(ドット) に見立てた食用金箔を組み合わせました。金箔を飲み物に浮かべ、乾杯して口にする。ゲームで親しんだ「クッキー(ドット)を食べる」という行為を、自分自身で楽しめる商品です。
この商品は、バンダイナムコエクスペリエンスが展開する「IP-ART」の取り組みから生まれました。キャラクターで、500年後の人の心を動かす。その思いから、アーティストや職人とともに、IP(キャラクター)の新たな表現に挑戦しています。
商品開発を共に担ったクラフトシップスが考えたのは、工芸にキャラクターを取り入れる意味でした。受け継がれてきた技術の魅力を大切にしながら、使う人にどんな楽しさを届けられるのか。
今回は、IP-ARTを推進するバンダイナムコエクスペリエンス プロデューサーの松村さんと、クラフトシップスの森川が対談。『PAC-MAN』を選んだ理由から、商品化に向けた工夫、今後の展望までを語り合いました。
※IP-ARTでは『PAC-MAN』の権利元である株式会社バンダイナムコエンターテインメントと連携し、『PAC-MAN』の意匠を取り入れた アート作品の展示や、その販売を行っています。

01 企画の背景 ── 500年後にも、人の心を動かす存在へ
クラフトシップス(CS) 森川)
今回、『PAC-MAN』を選んだ理由を教えてください。
バンダイナムコエクスペリエンス(BNXP) 松村さん)
最初のきっかけは、僕自身が『PAC-MAN』を好きだったことです。それから、世界に届ける取り組みにしたかったので、世界中で知られているキャラクターであることも重要でした。そこで、権利元でもあるバンダイナムコエンターテインメントの担当者にも提案し、今回実現しました。
職人さんやアーティストも『PAC-MAN』を知ってくださっているので、それぞれの視点で解釈し、表現を考えてもらえます。その広がりにも可能性を感じています。
取り組みを続ける中で、『PAC-MAN』はさまざまなアイデアと相性がいいと感じています。デザインはシンプルですが、メイズを進んでクッキー(ドット)を食べたり、ゴーストから逃げたりした体験自体が、人々の記憶に残っています。

CS 森川)
僕も幼い頃から遊んでいました。あまりに身近だったので、その特徴を改めて考えたことはなかったんです。でも、商品を考える中で、姿だけでなく、クッキー(ドット)を食べる動きまで覚えていることに気づきました。見た目に加えて、何をするキャラクターなのかも共有されている。そこは、『PAC-MAN』ならではの強みだと思います。
IP-ARTには、「500年後の人の心を動かす」という考えがありますよね。その背景を聞かせてください。
BNXP 松村さん)
これまでも、キャラクターをさまざまな商品に展開し、日常の中でたくさんの接点をつくってきました。一方で、キャラクターには、もっと長い時間の中で人の心を動かし続ける可能性があるのではないかと考え続けていました。
例えば風神雷神図屏風は、時代を越えて知られ、今も人の心を動かしています。風神雷神はある種、キャラクターとも呼べるのではないか、と考えています。『PAC-MAN』も、そうした文化的な存在になれたら、500年後の人の心を動かせるかもしれません。IP-ARTは、その可能性に挑戦する取り組みです。
CS 森川)
その考えには、ものづくりに関わる立場として強く惹かれました。工芸も、技術を受け継ぐ人と、それを使う人がいて、今日まで続いています。
次の時代にも残していくためには、今の人が手に取り、使いたくなる理由が必要です。今回も、自分たちが使いたいと思えるか、実際に使って心が動くかを大切にしました。
02 商品との出会い ── 乾杯に、音を加える
CS 森川)
kanpai bellを実際に手に取ったとき、どこに魅力を感じましたか。
BNXP 松村さん)
二人が酒器を持って乾杯する、その場面まで考えられているところが素晴らしい商品だと思いました。誰かと使うことで音が響き、その場を楽しめるようにつくられています。酒器の形や意匠だけでなく、乾杯する時間そのものに魅力があると感じました。

CS 森川)
僕らも、最初は音に惹かれました。
乾杯は、お祝いのときにも、一日の終わりに「お疲れさま」と言うときにもありますよね。普段は何気なくしていることですが、澄んだ音が響くと、その瞬間が印象に残ります。
工芸の技術が、日常のこうした場面で人の気持ちを動かすことに、kanpai bellの魅力を感じました。
BNXP 松村さん)
今回も、kanpai bellがもともと持っている体験を大切にしたいと思っていました。そこに『PAC-MAN』が加わることで、どんな楽しみ方ができるのか。使う場面まで考えた商品にしたかったんです。
03 企画の着眼点 ── クッキー(ドット)を、実際に食べる
『PAC-MAN』とkanpai bellを結びつけたのが、「クッキー(ドット)を食べる」という行為です。付属のツールで食用金箔を飲み物に浮かべ、乾杯して口にする。その手順に、『PAC-MAN』ならではの楽しさを取り入れました。
CS 森川)
ゲームでは、『PAC-MAN』を操作してクッキー(ドット)を食べていました。それを今度は、自分が食べるわけです。
実際に使って特に心が動いたのは、子どもの頃に遊んでいた『PAC-MAN』で、大人になった自分が乾杯していることでした。記憶の中の『PAC-MAN』は変わらないのに、楽しみ方は今の自分に合っています。それが、思っていた以上に感慨深かったんです。
BNXP 松村さん)
『PAC-MAN』の「食べる」というテーマによって、kanpai bellに新しい楽しみ方を加えられたと思います。金箔を浮かべるところから楽しんでもらえるのも、今回の組み合わせならではですね。

CS 森川)
昔から親しんでいたキャラクターを、今の生活でも使いたくなる。そのことが、愛着につながるのだと思いました。
お祝いの日にも、一日の終わりの「お疲れさま」にも使えます。幼い頃から知っている『PAC-MAN』が加わることで、いつもの乾杯まで特別に感じられるんです。懐かしさだけではなく、今使う楽しさがあることを大切にしたいですね。
BNXP 松村さん)
だからこそ、実際に使ってもらうことが大切です。京都のイベントでも「PAC-MAN:kanpai bell 音玉 - TONEs DOTs -」lを鳴らしてもらい、音や乾杯する楽しさを体感していただきたいと考えています。
04 開発の過程 ── 工芸にも、IPにも意味のある組み合わせを
CS 森川)
工芸とキャラクターを組み合わせる際、どのようなことが大切だと考えていますか。
BNXP 松村さん)
工芸は、長い時間をかけて技術が積み上げられ、それ自体で完成されているものです。そこにIPを加えれば、新しい価値が生まれるとは限りません。
キャラクターを前に出しすぎると、もともとの工芸の魅力が見えなくなってしまうこともあります。だからこそ、工芸のよさを大切にしながら、IPを加える意味を考えることが重要だと思っています。

CS 森川)
僕自身、伝統的なものには、どこか神聖な印象を持っていて、長く受け継がれてきたものに手を加えるなら、その理由をきちんと考えたいと思っていました。
現代のキャラクターを組み合わせることで、何がよくなるのか。意外性だけでは、商品をつくる理由として十分ではありません。そこは、慎重に考えました。
今回、乾杯の音と『PAC-MAN』の「食べる」を一緒に楽しめる形になったことで、工芸の技術も、キャラクターの特徴も、使う人に伝えられると考えました。実際の使い方に、組み合わせる意味を持たせられたと思います。
CS 森川)
今回、『PAC-MAN』らしさを商品へ落とし込むにあたって、どのような体制で開発を進められたのでしょうか。
BNXP 松村さん)
今回の商品の具体的な表現については、IP-ART全体のクリエイティブディレクターである三嶋章義さんに任せています。
私自身はプロデューサーとして、信頼できるクリエイターや職人の方々と出会い、その方々が力を発揮できる場をつくることが役割だと考えています。
今回も、三嶋さん、クラフトシップスさん、小泉製作所さんが、それぞれの専門性を活かしながら『PAC-MAN』と向き合うことで、どのような価値が生まれるのかを楽しみにしていました。
CS 森川)
今回も三嶋さんを中心に、それぞれの専門性を持ち寄りながら開発を進めましたが、松村さんからは、どのようなリクエストがあったのでしょうか。
BNXP 松村さん)
皆さんに私からお伝えしたのは、大きく二つだけでした。
一つは、『PAC-MAN』の意匠をそのまま載せるだけの商品にはしないでほしいということ。もう一つは、10月のイベントには何とか間に合わせてほしいということでした(笑)。
IP-ARTでは、IPホルダーがあらかじめ答えを用意するのではなく、さまざまな創り手との共創によって、新しい価値や体験を生み出すことを大切にしています。
そのため、どのような商品として形にするかについては、三嶋さんを中心としたチームに委ねました。
結果として、非常に限られた開発期間の中で、単にキャラクターの意匠を載せた商品ではなく、『PAC-MAN』の世界観や体験を自然に感じられるプロダクトへと落とし込んでいただけたと思っています。
工芸品としての魅力と、商品を手にした方が「なるほど、『PAC-MAN』だ」と感じられる納得感が、きちんと両立されていることが素晴らしいと感じています。
CS 森川)
限られた期間での開発となりましたが、実際の制作過程で印象に残っていることはありますか。
BNXP 松村さん)
クラフトシップスさんの対応力と開発力です。外観や体験についてさまざまなアイデアがある中で、それを受け止め、形にしてもらえました。
金箔を扱う道具や、木箱の中敷き一つについても検討が必要でした。限られた時間の中で、そうした部分まで対応してもらえたことがありがたかったです。
三嶋さんへの想いにも共感していただいて、一緒につくることができた商品だと感じています。

CS 森川)
やり取りを重ねる中で、アーティストが何を大切にしているのかを理解できるようになりました。その意図を共有できると、こちらも実現するための方法を具体的に考えられます。
金箔を飲み物に浮かべるというアイデアも、お客様が実際に楽しめる商品にするには、道具や収納まで検討する必要があります。企画した楽しさを、お客様の手元で実現するところまでが、僕らの仕事だと考えています。
BNXP 松村さん)
アーティストの解釈を受け入れながら、キャラクターの価値も大切にする。その両方を考えたことで、これまでとは違う表現や商品開発ができたと思います。
「500年後に残るものをつくりたい」という考えに、メンバーが共感してくれたことも大きかったですね。みんなが真剣に、楽しみながら取り組んでくれました。
05 今後の展望 ── 商品開発を、継続できる事業へ
CS 森川)
今回の開発を通して、IPと工芸の可能性をどう感じましたか。
BNXP 松村さん)
大きな可能性を感じました。『PAC-MAN』を通して、今この時間を楽しんでもらう。今回の商品では、これまでとは違うIP(キャラクター)の見せ方ができたと思います。
ただ、体験を加えるにはコストもかかります。工芸の魅力を大切にし、キャラクターの価値を損なわず、お客様に楽しんでもらう。その条件を満たしながら、ビジネスとして継続できる形にする必要があります。
どのような組み合わせなら、それができるのか。今後も考え続けなければいけない課題です。

CS 森川)
工芸は、使うことでよさが伝わります。「PAC-MAN:kanpai bell 音玉 - TONEs DOTs -」も、誰かと乾杯して音を聞くことで、その魅力を実感できます。
こうした使う楽しさをきちんと商品にしながら、継続できる事業にしていくことが大切ですね。今後、挑戦したいことを教えてください。
BNXP 松村さん)
海外にも届けたいです。世界中で知られているIP(キャラクター)と、日本の職人技術を組み合わせることで、国や文化を越えて楽しんでもらえる可能性があると思っています。
『PAC-MAN』以外のIPでも、工芸との商品づくりに挑戦していきたいですね。
そして、IP-ARTというブランドを育てていきたいです。このチームがつくるものなら、面白い商品や体験に出会える。そんな期待を持ってもらえる取り組みにしたいと思っています。

CS 森川)
キャラクターへの親しみが、工芸に関心を持つきっかけになります。そして職人の技術が、キャラクターの新しい楽しみ方を生みます。双方の魅力を引き出せることに、この取り組みの可能性を感じています。
クラフトシップスとして、これからもIPと産地、それぞれの背景を理解し、双方の魅力を活かした商品を企画・開発していきたいと考えています。企業やブランド、各地の職人とともに、今回のような挑戦を重ね、日本のものづくりの可能性を広げていきたいです。
展示・販売について
「PAC-MAN:kanpai bell 音玉 - TONEs DOTs -」は、IP-ARTの展示・販売に登場します。
会期:2026年10月17日(土)〜12月13日(日)
会場:BnA Alter Museum(京都府京都市)
セット内容:酒器2個、食用金箔、金箔を入れるためのツール、木箱
酒器のサイズ:直径39mm × 高さ76mm(1個あたり)
本体素材:鉛レス真鍮
本体製作地:富山県高岡市
食用金箔:金沢製、約1.5mm角(複数枚)
販売価格:60,000(税抜)
「KANPAI BELL」は、富山県高岡市の小泉製作所が手がける、乾杯の音を愉しむグラスです(特許・意匠登録取得済み)。
※食用金箔の使用方法・使用基準は、付属の表示・説明をご確認ください。
※販売情報は変更となる場合があります。
【パックマンについて】
1980年にアーケードゲームとして誕生した『パックマン』は2025年に45周年を迎えました。
『パックマン』は、業務用ゲーム機として1980年に発売され、「最も成功した業務用ゲーム機」としてギネス記録にも認定されている、世界で最も有名なゲームキャラクターのひとつであり、バンダイナムコエンターテインメントが誇るIP(Intellectual Property:知的財産)です。日本はもちろんのこと、80年代に米国で「パックマン フィーバー」といわれた空前のブームを巻き起こし、現在でも同国での認知度は98%、また米国以外でも多くの国・地域で90%以上の認知度を誇ります。
(『パックマン』海外認知度:当社独自調査結果より)
パックマンウェブ: https://pacman.com/jp/
X(日本版): https://twitter.com/BNEI_PACMAN_JP
Instagram(日本版): https://www.instagram.com/official_pacman_jp/
TikTok(日本版): http://www.tiktok.com/@pacman_official_jp
YouTube : https://www.youtube.com/@PACMANofficial
権利表記:PAC-MAN™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.
【IP-ARTについて】
キャラクターで、500年後の人の心を動かす。
わたしたちが目指しているのは、IP(キャラクター)によって新たな文化を創造することです。
これまでもキャラクターは、さまざまな芸術家たちによって二次創作の題材となるとともに、多様なファン活動を通じて、その価値がつくられてきました。非公式のかたちで展開されてきたものも、キャラクターの価値や認知の拡大に寄与してきたことは事実です。「IP-Art」の取り組みは、そうした動きを否定するのではなく、公式の枠組みの中でアーティストとIPの所有者が協働し、芸術文化として新たな解釈や文脈を社会に投げかける実践を目指します。
ゲームや映像のなかで生まれたキャラクターが、エンターテインメントの世界を飛び出し、アートとなって社会で人と出会うとき、新しい文化が駆動します。
