
Sep 11, 2025 / Interview
アクタス × クラフトシップス 日用品と職人技の共創記 vol.01[対談篇]
北欧の普遍性と日本の手仕事を重ねた
Werner シューメーカースツール〈石目模様モデル〉
アクタスと日本の職人技が生んだ開発背景を辿る
アクタスが創業以来大切にしてきたのは、単なる消費ではなく「作り手の顔が見える製品と、できる限り長く過ごす」という思想です。
北欧家具をはじめとした普遍的なデザインを日本の暮らしに紹介しながら、自社開発・修理・トレードインまで含めた循環を整備し、丁寧なくらしのスタンダードを更新してきました。
その象徴のひとつが、15世紀に靴職人の作業椅子として生まれた「Werner シューメーカースツール」。装飾を削ぎ落とした造形と身体に寄り添う座面は、デンマークの小さな工房から世界へと受け継がれています。アクタスが1991年に日本へ紹介して以来、30年以上愛される名作です。
今回、その名作にアクタスとクラフトシップスの共同開発で日本の職人技を重ねた〈石目模様モデル〉が誕生しました。鯖江の職人が一脚ずつ吹付塗装で仕上げるため、同じ表情は二つとありません。
本稿では、アクタスの商品開発・バイヤー花登さんにお話を伺い、受け継がれてきた思想と名作シューメーカースツールの魅力、そして別注モデルの構想を通して〈石目模様モデル〉誕生の裏側を辿ります。

01 コンセプト ── 「ものを長く使うこと」を前提に
CS 森川)
アクタスさんといえば「ものを長く使うこと」を大切にしている印象があります。
バイヤーとして、選定の基準はどこに置いていますか?
アクタス 花登さん)
私たちは選ぶこと自体をものづくりの一部と捉えています。見るのは品質だけではありません。10年後、20年後も一緒に歩める相手か。その関係を続ける前提があるからこそ、勢いだけでは選びません。
家具についても同じです。購入後の修理やトレードイン(再販売)まで仕組みを整えています。長く使えることが担保されなければ、家具はただの消耗品になってしまう。逆に、使い続けられる設計と体制があるからこそ、家具は表情を深めていくのだと思います。

02 名作の核 ── 普遍性と身体感覚に根ざした合理性
CS 森川)
Werner社とは30年以上のお付き合いだと伺っています。継続して選ばれてきた理由はどこにありますか?
アクタス 花登さん)
工房はデンマークの小さな田舎町にあり、家族経営で営まれています。ワーナーさんはとても物静かで、ただ「良いものをつくる」ことにまっすぐ。そういう真摯な姿勢と品質に、長く付き合う理由があります。
シューメーカースツールは、余計な装飾を削ぎ落とし、人の所作(座る・立つ・運ぶ)に自然に寄り添う設計です。無垢材や曲げ加工の構造は、時間の経過を劣化ではなく表情に変える。ここに普遍性があります。

03 開発の起点 ── 「原型への敬意」と“石目模様”という挑戦
CS 森川)
シューメーカースツールの無垢材へのリスペクトが強いからこそ、加飾には慎重でした。当初は漆で真っ黒に塗る案もありましたが、素材感が失われる。そこで選んだのが鯖江の職人による“石目模様”の吹付塗装です。
もともとはお盆の裏面に用いられ、テーブルを傷つけないための機能仕上げだった技術を、今回は意匠として転用しました。粒子径、艶の配分、下地処理、光の当たり方まで幾度も検証を重ね、ようやく完成に至りました。


アクタス 花登さん)
今回の企画においては私たちも一貫して、オリジナルの普遍性を損なわず、現代の空間に新しい表情を足すことを狙いとしていました。
無塗装は育てる楽しみがありますし、石目は触れ方や光で小さな変化が出る。どちらも長く使うほど愛着が深まるという同じ文脈に置けます。三本脚という構造も、意匠を受け止める自由度が高い。原型の良さを保ちながら、新しい顔を与えられたと感じています。
04 継承の仕組み ── メンテナンスという“運用デザイン”
CS 森川)
アクタスさんは長く使ってもらうためのレクチャーも行っていますよね。
アクタス 花登さん)
はい。HPでメンテナンス情報を公開し、ソープフィニッシュやオイル再施工など手入れの方法を整えています。
北欧では家具を“洗う文化”があり、年末にはガレージでじゃぶじゃぶ家具を洗う光景が一般的です。日本ではまだ馴染みがありませんが、「手入れすればまた使える」という安心があると、むしろ気を遣いすぎずに日常で使えるようになります。
製品だけでなく、使い方や直し方まで提供する体制が、結果的に“継承”を実装していくのだと思います。

05 限定モデルの価値 ── 「思い出を一緒に買う」
CS 森川)
限定モデルは、アクタスさんにとってどのような存在でしょうか。
アクタス 花登さん)
限定品は、「思い出を一緒に買う」ものだと考えています。「このタイミングでこの限定が出た」という出来事が家具と結びつき、記憶に残る。限定モデルの価値のひとつです。さらに、限定を入口にオリジナルへ回帰する循環も起きます。オリジナルが確かだからこそ、別注に意味が生まれるんです。
CS 森川)
なるほど。限定は単純に希少性ではなく、「あのとき買った」まで含めて暮らしに残る。結果として、消耗から継承へのスイッチが入る。今回のモデルも、その役割を担えたらと思います。
06 消費から継承へ ── 記憶を重ねる一脚
Werner シューメーカースツール〈石目模様モデル〉。
それは、北欧の普遍的デザインと日本の職人技が交差して生まれた、新しい物語を宿す一脚です。
デンマークの静かな土地から生まれた椅子は、都会の暮らしに置かれるとその静けさをいっそう際立たせます。たとえば、朝ふと目にした瞬間に心が整うように。その一瞬の積み重ねが、人生を豊かにする確かな時間となっていきます。
暮らしの中で消費されるのではなく、文化と記憶を継いでいく存在として。
単なる椅子ではなく、時代を編み継ぐ一脚となることを願っています。


展示・販売について
本モデルは『CRAFTED CONNECTIONS(クラフテッド・コネクションズ)』にて特別展示・販売されます。

会期:2025年9月24日(水)〜9月30日(火)
会場:銀座三越本館7階 GINZAステージ
営業時間:10:00〜20:00(最終日は18:00閉場)
入場:無料
職人技術と6ブランドの共創によって生まれた限定モデルが一堂に会する本イベントで、ぜひ〈アクタス × クラフトシップス〉の新しいかたちをご覧ください。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000141714.html
※なお、本商品はイベント開催期間中(2025年9月24日〜9月30日)のみの限定販売となります。
会場に加え、公式オンラインショップでも同期間中のみご購入いただけます。
《 公式オンラインショップ 》
【 アクタスについて 】
「豊かなくらしとはただ消費を繰り返すことではなく、作り手の顔が見える製品とできる限り長い時間を過ごすこと」創業メンバーが残したこの言葉を現在にも受け継ぎ、1969年の創業以来、欧州のモダンインテリアを日本のマーケットに広めてきました。
アクタスはライフスタイルストアという独自の立ち位置をとり、“丁寧なくらし”というテーマのもと、永く使い続けることのできる良質なデザインのヨーロッパの家具、オリジナル家具、インテリア小物、アパレル、グリーンの提供までライフスタイル全般をサポートします。また、環境負荷を最小限に抑えたサステナブルなサプライチェーンを運営し、独自のサーキュラーエコノミーの推進にも取り組んでいます。
公式HP:https://www.actus-interior.com/
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